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民族衣装の前掛け展

 5月のすぺーすくじらネットギャラリーは民族衣装の前掛けです。先回の人形展に引き続きユーロのものに注目して展示いたしました。この地域の展示は10年ぶりの企画となりました。ユーロ圏を旅した当時の写真とともにお楽しみいただければ幸いです。

 2024年5月1日よりネットギャラリーにて公開 

GALLERY 

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 先回の人形展でユーロ圏はどの地域のものも前掛けを着装していて、衣装の特徴的な役割をはたしていることに興味を持ちました。大きさ、素材、装飾技法が地域や民族により異なり驚くほど多様で、昔からの前掛けは一見すればどの町のものかが分かるほどのこだわりがありました。すぺーすくじらのコレクションは十年前まではアジアの衣装蒐集に注力していました。中国少数民族の円形スカートと前掛けに手間隙かけた魅力的なものがあり夢中になりました。そのころ同様の円形スカートと前掛け衣装が遠く離れた東欧にもあることを知り行ってみたいと願いました。2012年から2019年まで毎年ユーロ圏を列車で旅して各都市の博物館で実物を拝観・撮影させてもらい勉強しました。そして博物館で展示されていたような伝統衣装を何点かコレクションできたことは幸運なことでした。プリーツの前掛けに赤い薔薇の刺繍がひときわ美しく印象的なトランシルバニア地方カロタセグの衣装は初めて訪れたハンガリーのブタペストで見つけて手に入れました。この地域はたびたび国境が変更した悲惨な歴史があります。今は隣国ルーマニア領ですが「ハンガリー人(マジャール人)の民族衣装は母や祖母が所有していたもの」とお店のご主人から説明を受けました。このお店で同時に藍染めの前掛けを勧められて入手しました。地味ですが民族の歴史文化が感じられるもので私にとっては宝物のように感じる一枚です。

​民族衣装の前掛け模様

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赤いバラの刺繍文様は魔をよけると信じられ代々受け継がれ、刺繍の色は赤と定められた時代があったとも聞きました。これはカロタセグのプリーツ前掛けです。この地域はたびたび国境が変更した歴史があり、今はルーマニア領ですがハンガリー人の衣装との説明を受けました。

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ザクロは多数の実を結ぶことから子供に恵まれ、家族が幸せに豊かになる願いをこめ刺繍されます。またキリスト教ではザクロはイエスの再生と復活を象徴する文様といわれてます。これはチェコのモラビア地方キヨフのものです。

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チェコの伝統藍染を当時と同じ手作業で制作しているモラビア地方のヨフ工房で染められたものです。穀物畑に咲く花の伝統的パターン「ヤグルマソウ」を復刻したものと、チェコの藍染を日本に紹介販売しているヴィオルカの小川里枝さんから購入時に教えていただきました。

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​春に一斉に花を咲かせるチューリップは希望に満ち、生命力の象徴とされています。17世紀の中頃にユーロでは「チューリップ・マニア」と呼ばれ熱狂的にもてはやされました。赤いチュ-リップはオスマントルコ時代にもたらされたようです。サルジニア島の刺繍デザインのものをアップリケで模倣したものかと思っています。

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​ポルトガル、ミニョー地方の伝統前掛けは毛糸のループパイル織のバラ模様が華麗ですが、こちらのものは幾何学模様でやや小ぶりなので未婚女性のものかもしれません。別添えの飾りポケット(アルジベイラ)と組み合わせます。

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「ハンガリーに住むクロアチア人居住地方では暗くて黄色の花模様の木版染めが好まれた」と在日ハンガリー手芸家イロナ・キッシさんが染織αに寄稿されています。この前掛けは日本で手に入れたものでハンガリーで入手したものによく似ていますが詳細は不明です。

参考資料

 世界の服飾文様図鑑  文化学園服飾博物館 編著

​ 世界の民族衣装    ナショナルジオグラフィック編

 

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